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■ 講義(7科目)

講義 タイトル 講師(所属)
講義1 放射光発生の基礎 金城 良太(理化学研究所)
放射光、特にシンクロトロン放射光は、高エネルギー電子が磁場により偏向を受けた時に発生する電磁放射で、指向性に優れ、輝度が高く、マイクロ波から赤外、可視光、紫外、真空紫外、軟X線、硬X線、ガンマ線までの幅広い波長領域をカバーする。本講義では、代表的なシンクロトロン放射である偏向電磁石放射、アンジュレータ放射、コヒーレントシンクロトロン放射、自由電子レーザーなどについて、その性質を述べるとともに発生原理の直感的な説明を試みる。
講義2 X線光学の基礎 山崎 裕史(高輝度光科学研究センター/兵庫県立大学)
放射光ビームラインの多くには光学系と呼ばれる区域があり、分光器やミラー(反射鏡)等が配置されている。分光器は広帯域の放射光の中から特定の波長成分だけを抜き取る装置である。ミラーは、分光器で取りきれない高次光の除去や、集光の用途で用いられる。分光器やミラーは、散乱・屈折・反射というX線光学現象の基本要素の応用である。本稿では、X線光学現象の説明から始めて、分光器とミラーの原理を紹介する。
講義3 X線の強度を測る 雨宮 慶幸(東京大学)
X線は回折・散乱されるときは波として振る舞いますが、検出されるときは粒子(光子:photon)として振る舞います。試料から回折・散乱されたX線の強度を測ることは、X線光子の数を数えることであり、その数を場所と時刻の関数として測定する装置がX線検出器です。最初に、光の波と粒子の二重性と光子統計について解説します。次に、1)X線検出器でX線が検出される原理、2)放射光用X線検出器に求められる性能、3)各種のX線検出器の構造と性能、について平易に解説します。
講義4 X線自由電子レーザー 大和田 成起(理化学研究所)
2011年3月、SPring-8にX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」が完成し、同年6月にはレーザー発振を達成しました。XFELは高強度、超短パルス、コヒーレントという特徴を持った新しい光源です。このXFELにより、化学反応などの高速現象の追跡、膜タンパク質など生理学上重要な物質の3次元構造の解析、また高強度X線による極限状態生成など、これまでに困難とされてきた研究が可能となることが期待されています。この講座では、SACLAの特徴と、運転状況、応用分野について説明します。
講義5 回折・散乱の基礎と物質科学研究への応用 水木 純一郎(関西学院大学理工学研究科)
物質科学の研究を遂行するにあたり、対象とする物質の結晶構造情報を得ることは「初めの一歩」であり、それだけに最も重要な仕事の一つです。講義では、構造研究で利用されるいくつかの量子ビームの中で、主にX線を念頭に置いた(時には中性子線との比較も交えた)回折の基礎、さらにその発展ともいえる物質のダイナミックスが観測できる非弾性散乱に関しても説明し、回折・散乱が物質の機能発現機構解明に威力を発揮することを理解してもらいます。
講義6 X線分光の基礎 水牧 仁一朗(高輝度光科学研究センター)
X線領域(数百eV程度から十数keV程度のエネルギー領域)の光は高エネルギーを持ち、特定の元素の内殻軌道の電子を伝導帯に励起させることが可能となる。これにより、物質構成原子の各々の電子状態を元素選択的に、詳細に知ることができ、これは他の分光法にはない特長である。講義では、X線分光の実験手法とその原理を解説し、「元素選択的」という特長を用いた研究例を紹介する。
講義7 軟X線を用いた分光・回折入門 和達 大樹(東京大学 物性研究所)
本講義では、軟X線を用いたX線吸収分光やX線回折について取り扱う。軟X線を用いることにより、3d遷移金属の2p→3dの吸収端での共鳴現象を使うことができ、2p内殻の大きなスピン軌道相互作用を利用して磁気的なシグナルを得ることができる。本講義では数多くある実験手法のうち、強磁性体に対するX線吸収分光の磁気円二色性と、反強磁性体・らせん磁性体に対する共鳴軟X線回折について説明し、軟X線の威力を示したい。

■ 実習(15件より2テーマを選択)

15件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます。ただし、特定のテーマに希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りませんのでご了承下さい。また、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合がありますので、ご理解をお願い致します。
BL タイトル 講師(所属)
BL01B1 "その場" XAFS計測 宇留賀 朋哉・新田 清文・加藤 和男・伊奈 稔哲(JASRI)
XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する。
BL02B1 単結晶構造解析の入門 野上 由夫(岡山大学)、杉本 邦久・安田 伸広(JASRI)
単結晶は粉末結晶に比べ、以下の特徴を有する。1)晶系や結晶の対称性(空間群)の決定が容易である。2)並進対称性の破れ(格子変調)の検出も容易である。本実習では、単結晶構造解析の原理を解説し、CCD検出器を用いた回折装置で実際に測定をおこない、低分子単結晶の原子座標を精密に決定する。
BL07LSU 推理の放射光元素分析 原田 慈久・松田 巖(東京大学)
化学反応などの自然現象の理解は基礎科学の発展だけでなく技術開発の設計指針も与えます。その中で構築されたモデルの実証には、今や科学的分析が不可欠であり、中でも放射光を用いた元素分析は様々な分野で利用されています。本実習では、見た目が同じでも化学組成の異なる合金の光電子分光による元素分析を実施してもらい、実験的証拠をもとに推理を働かせ、課題解決へと導く過程を学んでいただきます。
BL11XU XAFSによる溶液内イオンの光酸化還元挙動解明 塩飽 秀啓・矢板 毅・小林 徹(JAEA)
XAFS測定法は、測定試料の形態問わず目的元素の局所構造を解析できる手法として、広く利用されています。本実習では、アンジュレータ高輝度放射光とQuickXAFS測定法を利用して、光酸化還元反応によって徐々に変化する構造とスペクトルのその場観察を行い、さらにUV-VIS吸収スペクトルとの比較から考察します。また、XAFSデータ解析の基礎について学習します。
BL13XU サブミクロン集光放射光ビームによる局所領域回折実験 木村 滋(JASRI/岡山大学)
SPring-8のような第三世代放射光源の最大の特長は輝度が高いことにあります。この特長は微小なX線ビームを形成する場合に威力を発揮します。本実習では、SPring-8の放射光をゾーンプレートと呼ばれる集光素子でサブミクロンサイズに集光するとともに、その集光ビームを利用したX線回折を実施します。この手法が局所領域構造を調べる上で非常に有効であることを、ミクロン領域に選択成長した化合物半導体細線構造を測定することで実感してもらいます。
BL14B2 XAFS分析の基礎 本間 徹生・高垣 昌史・大渕 博宣(JASRI)
XAFS法は、結晶化していない物質や、濃度が希薄な材料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、触媒、電池、発光材料など様々な研究分野で利用されています。本実習では、XAFS計測を行うための試料調整と、その原理に忠実な透過法による測定およびフリーの解析ソフトを用いたスペクトル解析を行い、XAFS分析の基礎について学んで頂く予定です。
BL17SU 軟X線でみる液体の世界 徳島 高(理研)
液体中の分子や原子は、固体のように整列してはいないが、気体のようにばらばらに飛び回っているわけではない。このような中間的な系において分子を構成する電子はいったいどのようなっているのだろうか? この疑問への答えは実はまだないのだが、実験技術の進歩により可能となった軟X線を用いた元素選択的な観測によりその一端が明らかになりつつある。実習では軟X線吸収および軟X線発光による液体中の分子の電子状態観測実験を行い液体と電子状態について考える。
BL19B2 粉末X線回折 渡辺 剛・井上 大輔・佐藤 眞直(JASRI)、廣沢 一郎(JASRI/岡山大学)
粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラで良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。
BL20B2 放射光X線画像計測の基礎 上杉 健太朗(JASRI)
放射光X線を用いた画像計測では、空間分解能だけではなく感度や信号量の定量性なども重要な要素である。本実習ではいくつかのX線画像計測用の検出器を使用しその特性を測る事で、放射光X線の特徴や検出器の特性を知る事を目的とする。
BL22XU 高圧下における物質の状態変化 綿貫 徹(JAEA)
日常では気体状態の物質も、1万気圧以上の高圧下では固体状態へと変化する。実習では、実際に1万気圧以上への加圧を体験し、放射光X線回折実験により希ガスが固体状態へと変化する様子を観察する。また、固化前の高密度流体状態のX線回折像と固化後の結晶状態の回折像の違いについて学び、固化前後において原子間距離がどのように変化していくかを決定する。
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光 横谷 尚睦(岡山大学)、中村 哲也・室 隆桂之(JASRI)
光電子分光は、光電効果を利用して物質の電子状態を観測する手法です。価電子帯の測定から物性発現の起源や機構を理解する事ができるとともに、内殻準位測定からは構成元素の種類やその化学結合状態を知る事が出来ます。SPring-8が発する高強度・高分解能軟X線は、実験室光源では難しかった微量元素の検出やその化学結合状態の観測を可能にしました。本実習では、不純物をドープしたダイヤモンド等を測定試料として用い、その中に含まれる微量不純物元素の同定や化学結合状態を調べる予定です。
単結晶回折(タンパク質) BL26B1 熊坂 崇(JASRI/理研/関西学院大学)
BL26B2 引間 孝明・吾郷 日出夫(理研)
単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定とSAD法による位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
BL40B2 X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析 八木 直人・関口 博史(JASRI)
X線小角散乱法(SAXS)は、数nmから数µmの大きさや周期を持つ物質について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法です。これは高分子から粘土まであらゆる種類の物質に応用できる手法ですが、タンパク質溶液に適用することにより、“生きた状態”に近いタンパク質分子の構造を知ることができます。本実習ではタンパク質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、タンパク質分子の構造-機能相関について考察します。SAXSの基礎と測定手法に関する知識は、タンパク質以外の試料にも役立つと思います。
BL46XU X線反射率 小金澤 智之(JASRI)
可視光と同じようにX線も屈折率が変化する界面においてX線の反射・全反射・屈折が起こります。これらの現象を利用した分析手法がX線反射率です。X線反射率では膜厚が数nmの薄膜の密度や膜厚を評価することができます。実習ではシリコン基板やガラス基板に成膜された薄膜の膜厚評価を通して、X線の反射・全反射現象を体験していただきます。